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「看護情報学」受講者プレゼンテーション2006
 概要とポイント

概要
 「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」に自分の家族がなったという設定で検索サイトを用い、ALSの情報を検索した。Googleでも Yahooでも10万件を超えるヒット数に驚く。キーワードとして「筋萎縮性側索硬化症 」か「ALS]で結果は違う。リストの順位は検索サイトによって違い、各サイトで独自のランキングをしている。最初のほうに載っているサイトの情報は重要なサイトというが、信頼性の高い情報なのか疑問である。最初の100件を見るので精一杯という状況で、信頼性の高い情報にアクセスできるのか。少なくとも複数の検索サイトで検索する必要がある。
『情報通信白書』(2005.総務省)など各種の日本人の情報利用に関連した調査によると、健康情報ではインターネットがもっとも利用割合が多くなってきている。しかし、調査によると「かなり信頼できる」との回答はわずかで、「まあまあ信頼できる」がほとんどを占める。
 信頼性の基準としては、国内外で評価組織あるいは認証組織が立ち上がってきているが、日本ではまだ普及は少ない現状であった。さまざまな機会で医療者がもっと関与する必要があるのではないかと考えられた。信頼できる第3者による評価組織が複数立ち上がることも重要と指摘できた。

ポイント

 検索サイトでの表示順位は信頼性をあらわすかは疑問であるが、実際には表示順に利用されている。ネットの利用増加に対して信頼性の評価不足の現状では医療者の一層の関与と第3者評価組織の確立の必要性がある。


・手術を受ける患者の意思決定(病院・医師選び)(田淵由美)

概要
  手術室勤務の経験から、「腹腔鏡下卵巣嚢腫摘出術」を受ける場合、よい手術を受けるための患者の意思決定を考えた。病院の手術件数をインターネットで確認できたが、経験上、この数字と医師の腕は関係なく、慣れてはいるというものである。インターネットでは、医師の腕に関するサイトは見つからない。
患者の家族、医師、医療ライターなどが医師の選び方を提示しているサイトを見る。「手術 医師の選び方」をキーワードで検索すると、美容外科のものがほとんど。医師の腕は、医療者でないと分からないかも知れず、さらに言えば、親しい医療者でないとホンネは聞けない。また、病院の療養環境についてはクチコミなどの情報以外はあまりない。
 知りたい情報を得るには、時間と労力がかかり、しかも十分に得ることは困難である。意思決定を行なうには限られた情報しかなく、偏りが生じる不安があるし、クチコミの情報は逆に、患者を混乱させる可能性もあるかもしれない。他方、クチコミは重要なサポート資源である。

ポイント
手術のための腕のいい医師選び、療養環境からみた病院選びは難しく、クチコミだけではかえって問題が生じる可能性があるが、サポート資源としては重要な位置と役割を占めている。


・妊娠・出産・育児に関する情報(清水範子)

概要
 分娩は自然分娩、パートナー立会い、2人目からは上の子も立会い、3人目は自宅分娩(自分で産みたい)をしたいと思い情報収集した。分娩場所、分娩費用、助産師開設のページ、専門家を探す・相談する、子育て便利サイト、ブログなどが調べられた。体験記としておかあさん達は結構ホームページを作成している。いい交流と情報交換になっている。助産師のページは助産師同士の交流にも使える。しかし、物語ふうなものが多く、エビデンスを用いているものは少ない。信頼性と妥当性を記載しているものはみつけられなかった。

ポイント

 妊娠・出産・育児については当事者や専門家らの豊富なサイトが特徴的だが、エビンデンスが不足している。


・アンチエイジングの世界:ボツリヌス菌注入の検索 (中村順子)

概要
  アンチエイジングについて、安全性に関する情報はどの程度市民に届いているのか調べた。単純なキーワードで検索を進めると、ほとんどが美容整形の広告で、いいことしか書いていないことが多い。これらのサイトで得られる情報は、ボツリヌス菌注入(ボトックス)の効果が中心である。不自然な表情になることがあることや、3〜6ヶ月で効果がなくなることなどは書かれているが、アドバイスとしては施術の難しさから経験豊富なドクターを選びましょうというものが多い。「訴訟」をキーワードに追加することで、ボトックスの詳しいことがわかり、製薬会社のサイトでは「薬」として情報公開をしていた。副作用発現症例数や、重篤なものの報告も発見された。欧米では、Medlineplusなど政府系の市民向け情報サイト(「REMEMBER- Botox(TM) is a drug, not a cosmetic.」と書かれている)や市民のチェックサイトが上位に上がったり、バランスのよい情報提供が目立つ。

ポイント
 商業的な情報が優先している場合には、ごく一般的な単純なキーワードでは、副作用などのネガティブな情報、本当に知りたい情報にはたどり着きにくい。


・子どものヘルスリテラシーの向上 (大橋久美子)

概要
 現代の子どもの健康と生活の変化から健康教育の必要性を感じ日米の子供向けサイトを見てみた。その結果、子どもの検索能力やポータルサイトのわかりやすさで、よいコンテンツへのアクセスが異なること、興味をひくという点では、ネーミング、アニメーション、チェックシート、ゲーム、評価型のコンテンツなどに配慮が必要であること、病気の知識からでなく日常生活に身近な視点とからの健康教育内容のほうが子どもが入りやすいこと、家庭で、子どもと家族とが共有して学ぶことで、フィードバックしながら学ぶ効果が期待できることなどがあげられた。とくにアメリカでは、「エデュテイメント(教育と娯楽を組み合わせた造語)」の歴史があり、最近ではエンターテインメント以外の目的で作られたゲームである「シリアスゲーム」が多く作られ普及してきているという動向に目を向ける必要がある。

ポイント
  日米の子供向けのコンテンツでは、アクセスのしやすさ、興味を引く工夫、子供と家族との共有することの効果への配慮などの点で差があるように思われた。シリアスゲームの普及も視野に入れつつ、看護職の役割として、子供や家族へ良いサイトや利用方法の情報提供をすることを考慮していく必要がある。


・サプリメントに関する情報収集(森山ますみ)

概要
 サプリメント選びの注意点を知ろうと検索したが、膨大なサイト。「サプリメントの定義」などキーワードで絞り、サイト管理者が誰かに気を配りながら情報を探すと、平成14年に厚生労働省が「多種多様なサプリメントが販売されてる中で、消費者の方が自分の健康増進の目的に合ったサプリメントを安全にかつ適切に選ぶ為には、成分の機能や活用方法等の、情報を正しく提供できる助言者の育成が必要」との考えから、サプリメントアドバイザー育成に関するガイドラインを出し、これをもとに日本臨床栄養協会でサプリメントアドバイザー認定試験ができたことがわかった。しかし、何を補うかは個々人が何が不足しているかを明確にし、食事では改善が望めない場合のみ支援が必要という視点がどれだけ重視されているかは検討の余地があるように思われた。

ポイント
 単純な検索では企業の宣伝が多いため必要な情報を収集するにはキーワード選びと情報提供者に対するクリティカルな目が必要。支援情報も消費者個々人のニーズに合わせたものになっているかの確認が必要である。


・メンタルヘルス(瀬尾智美)

概要
  精神科外来で初回面接を経験し、職場不適応の人々に出会った。サイトで病院を見つけたという方も多く、どのような情報が流れているのかを調べてみた。メンタルヘルスで検索すると厚生労働省や関連機関、研究所、企業、病院(個人クリニック)、社会保険事務所、大学、2チャンネルなど多様であり、内容も幅広い。変わったところでは内服薬人気ランキングなどもあった。実際の相談ではQ&Aサイトや掲示板の利用が多く、ここの持つ効果も考える必要がある。しかし、自殺サイトなどへの容易なアクセスも懸念され、支援的なサイトとの出会いを促進する方法について考える必要がある。

ポイント
 情報が多様すぎて、そこから検索する意欲がある人は問題が少ない人かもしれず、そうでない人は検索が難しいかもしれない。企業のメンタルヘルス対策は見えにくく、むしろ一般の掲示板の持つ効果の可能性が示唆されるが、支援的なサイトに優先的にアクセスできることについて検討が必要である。


・高齢者の持病に関する情報収集方法およびインターネットとの接点、
 患者会とインターネット(寺井美峰子)


概要
 身近の高齢者の情報収集とインターネットとの接点について調べた。持病については患者会に会員登録し、会誌など印刷物で情報を得ていた。インターネットの接点は無いが、便利だと聞くものの想像がつかないこととネット情報に惑わされることも怖い。しかし、新薬情報や病院の新しい医師のことなどネットで調べられることがあり、隠れたニーズはある。同年代でも利用者もあるので、環境次第の面も。知りたい情報をネットで調べてくれるサービスが病院にあったら有料でも利用したいという。
  患者用の病院内学習施設として、「患者学習センター」「患者図書館」が普及してきている。専門のスタッフがいて医療現場と連携して患者教育にあたっているが、海外と比べて日本ではあまり活用されていない。患者会のサイトも多いが、患者に情報提供するにあたり、どの情報が適切でどの情報が不適切であるかという判断基準の問題が指摘された。近年はエキスパート患者やその語り(ナラティブ)の活用(『患者の語り』データベース)も注目されるようになっている。
  看護職が活躍する新たな分野になることを確信するようになった。「健康情報アドバイザー」といった命名をして研修を行い、修了者を世間に活用してもらうべきであるとの提案。

ポイント
 高齢者はネット情報についての支援ニーズがある。患者用の病院内学習施設の利用促進や患者会サイトからの適切な情報においても看護職が新たな役割を果たせる領域である。


・遺伝子組み換え食品は本当に危険?(近藤あゆみ)

概要
 医学や看護以外の分野において、専門知識のない消費者の立場で情報を収集し、誤解を与えない情報提供について考えた。遺伝子組み換え食品について調べた結果、一般消費者の知識と意識調査では否定的な意見が多いこと、それに対し日本の安全性管理が整っていること、反対派のサイトでは意見が感情的で具体的なデータを示していないのに対して、研究者のサイトではデータによって論理的に説明されていること、海外では先入観のないサイトが多く、規制も日本よりも緩やかな国々もあることなどが指摘された。受講者の意識はプレゼンテーションの前後では、否定的なものからより受容的に変化した。医療分野でも誰かの解釈が入った情報は、ゆがめられていることもあり、惑わされる消費者がいると推察された。
  情報を与えるのではなく、情報を消費者が得ようとするそのプロセスが重要であり、看護職と消費者の双方のコミュニケーションを通じてヘルスリテラシーが身につけられると思われた。看護情報学の大学院を作ってくださいとの希望があった。

ポイント
  必ずしもデータに基づかず一方的な解釈で感情的なサイトの存在が、消費者に誤解を生んでいることが指摘できた。データから情報を読み取る力、ヘルスリテラシーが必要で、その支援者(=看護職)が必要である。


・インターネット診断・診療は可能か??(追原早苗)

概要
 風邪で熱があってだるい時は病院に行くのは辛いのと、病院は単なる風邪で受診する人が多く、診断も患者の主観的な情報で行われること多いので、病院全体の待ち時間を考えても、そのような人はインターネット診断・処方で十分ではないか、という友人のために、その可能性について調べた。
  遠隔医療については、法的な問題もあり、1997年旧厚生省通達「直接の対面診療に代替できる程度の患者の心身に関する有用な情報を得られる場合」遠隔診療が可能になった。しかし「あくまで対面診療を補完するもの」「急性疾患では原則として対面診療を行うこと」とある。この場合でも、情報が十分得られればよいのでは。Webカメラなどの利用もできる。利用者の自己責任が確認されていればということもある。 

ポイント
 遠隔医療,e-healthのニーズや活用の可能性は十分あるのではないか。その支援も看護職が十分行えるのではないか。


・ある染色体異常症をめぐって〜患者家族からの情報発信を中心に〜井手由美

概要
 NICUの看護師であることから、予後不良の染色体異常症である18トリソミーの患者のことについて調べた。「18トリソミー」で検索すると家族の声としてピアサポートグループ、ブログ・パーソナルサイトがヒットした。比較的稀な疾患であり、かつては情報も少なかったが、現在は患者家族が自らの経験に基づいて多くの情報を発信していた。家族の思いと外科手術のリスクで葛藤が生じることがあるが、関連した情報も提供され、サポーティブなサイトが存在した。ここでのナラティブ、語りは当事者にとっても、また支援者にとっても貴重な情報である。
  他方で、サイトを運営することは中傷や批判の対象となり得る危険性も含んでいる。病状の克明な記述や写真の多用は倫理的な面での配慮や議論が必要である。個人差が大きいため、それぞれの経過に必ずしも共通性があるわけではないことも忘れてはならない。
最後に「看護の立場から」として患者、家族、医療者における情報についてスライドにまとめた。

ポイント
 サイト上では患者や家族のナラティブに数多く触れることができ、場合によってはインタビュー調査をしのぐ情報が得られる可能性を持っている。
 看護の立場から、子どもと家族が発するメッセージのキャッチをはじめ、コミュニケーション促進、意思決定支援まで関与、支援するプロセスはいくつもある。